2014/07/19

サイレントヒル祭り Part3

 原題"Silent Hill: Revelation 3D"
 邦題『サイレントヒル リベレーション3D』


前回、映画版SHの1作目を紹介しました。続編を匂わせない終わり方をしましたが、6年後の2012年に来ることがないと思われていた2作目がやってきました。




私はPart2で言いましたね「ゲーム原作の映画は総じて失敗する」と。

前作はその点、問題はあったにしても総合的に成功したと言っていいでしょう。その続編、きっと前作同様いい感じになっているはず、さっそく見ないと!

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ふざけんなよ! なんだこれ! どうやったらこんな肥溜みたいな映画が作れるんだよ!

じゃあ項目ごとに今作の汚らわしさを暴いていこう。



ストーリー

今作はゲーム版SHの3作目を元にしている。ストーリーの根っこは成長したシャロンがヘザーと名前を変えて(厳密には成長ではない)活躍していく物語。そこは今作でも変わりない。さくっと流れを示そう。

ヘザー「幻覚みるわおっさんに追いかけられるわで散々」

ダグラス「あんた教団に追いかけられてるよ」

ヘザー「父さんが教団に連れ去られたから取り返しにSH行くか」

ヴィンセント「なりゆきで恋人っぽくなったから助けてあげる」

ヘザー「教団ぶっつぶして父さん助けたぜ」

お わ り

今作の問題点、ストーリーも登場人物も改変しすぎ! 主人公がヘザーである点と大雑把な流れ以外は原型がないじゃねえか!

まずヴィンセントが青春映画に出てきそうな好青年として登場してくる。初め見たときは「ああーそういう感じになったか……まあ、いいか」と思ったけど話が進むにつれて我慢できなくなってくる。

しかも敵である教団側の人間でヘザーを捕まえようと送りこまれた者だったが、ヘザーに惚れて心変わりをするなんて、喉をかきむしりたくなるほど臭い設定に。ヘザーの恋人役、単なる腰ぎんちゃくにさせられてしまっている。

ただのイケメン君

次はダグラス、彼も原作改変のもっともひどい被害者。なにせ映画が始まって20分ほどで死ぬんだからな! ウソだろ!? 原作じゃ最後まで生き残ったじゃん! しかもヘザーの貴重な仲間として、地味ながらしっかり活躍してくれたってのに。

つまりこういうことだ。今作はダグラスっておっさんはいらない。けど恋人(笑)はいるよね? 誰か適当な役いないかなあ。あ、そうだヴィンセントにすればいいんだ。

さらに次はヘザーの父親ハリー(今作での本名はクリストファー)。初代SHの主人公でありながらもSH3では殺されてしまい、ファンに衝撃を与えた。原作ヘザーはこの父親の死によってSHへ向かうことを決意した。

今作ではハリーは捕まってSHへ連れ去られるだけ。そして……最後まで生き残る!

勘弁してくれよ……

ただでさえヴィンセントが生き残ってんのに、お前までのこのこ出てくんじゃないよ。どっちか死ぬか、どっちも死ぬか、そのくらいの悲劇がこいよ。これは何の映画ですか!? SHの映画でしょーが!!

ヘザー含めて3人も生き残ったら恐怖も何もあったもんじゃない。というか前作映画があんなに悲壮で後味の悪い展開をしてみせたんだよ。今作が「やったーウレピーハッピーエンドだー」って納得できるわけがない。

100歩ゆずってハリー生存を許すとしよう。絶対に……絶対に許さないけど、仮に許すとしよう。すると次に許せないことが見えてくる。

ラスト、3人で仲良く生SHの街を出ようとする。するとハリーだけ立ち止まって「ローズを探したいから街に残るよ」と言い出す。

ローズは前作のラストで霧に包まれたまま現実に戻ることができなかった。ハリーはずっと妻のことを引きずっていて、この機会に探すことを決意したわけだ。

あのさあ。ハリーをSHの異世界に留めるんだったらなんで生き残らせたの? それ死んでいるのと変わらないじゃん。しかも命がけで助けにきたヘザーは、この女々しい父親の女々しい決断をあっさり受け止める。

ヘザーとハリーの最後の会話はこっけいで見てられない。なんでそんな希望に満ち溢れているんだお前ら。最悪、この展開にするんだったら、せめてハリーが何も言わず立ち去るとか……もうちょっとSHらしい見せ方があったでしょ。

私の言い分をまとめると、ハリー生存はありえない。

最後、クローディア・ウルフ。原作同様に敵役。

見た目が笑える。肌も髪も真っ白。一応は原作再現っぽいから我慢できるとして、身につけている服まで白くするのはどういうこと?「わたくし悪役でございまーす」と聞こえてきそうなほどの目立ちっぷり。

右:クローディア
左:ヴィンセント

なんとクローディアは終盤でどんでん返しをみせる。実はクリーチャーだった!? ミショナリーというクリーチャーで、序盤から何度かヘザーにちょっかいをかけていたのは彼女だったと判明する。

もう勘弁してくれよ! なんでそんなに頭の悪い展開ばかり入れたがるんだ。アメコミのヴィランとか、日曜朝の特撮の悪役とか、そういうノリはマジでやめろ。マジで、怖くないし、笑えない。 マ ジ で 。

ざっとこんな感じ。ストーリーの時点で救い難い、ゴミ箱の底にへばりついたガムみたいな映画であることが分かる。しかし、それだけで終わるわけがない。今作はさらにゲームファン、映画ファンを追いつめていく。



ホラー観

結論を先に言わせてもらうと「まったく怖くない」

理由はまず上に述べたようにストーリーのだらしなさ。無視できない問題が多すぎて怖がるどころではない。

次の理由は、怖いという気分になれない。なぜかというと序盤の展開がゴチャゴチャ、ストーリーを追いかけるのに必死で気分を切り替えられないから。

ヴィンセントが現れてーなんか恋人になりそうな絡み方してーダグラスが現れてーなんか警告しているうちに死んでーハリーが捕まってーヘザーはSHへ行くことになってーしかも途中でヴィンセントまで捕まってー……ああもう。

前作の序盤はゆっくりと進んでいく。激しい展開もあるけど示されるストーリーは分かりやすくて、受け手は激しい展開に没頭できる。今作にそんな気配りはナシ。

次、人が多すぎる。前作でもこれは少し気になる部分だったけど、なんとか持ちこたえることができた。今作は目について仕方がない。

今作のSHはもはや異世界ではない。ただの過疎った田舎。平気でそこら中に人がいる。ヘザーが最初に街に来たときなんか建物の窓から人々が覗いてお出迎え。フレンドリーな街ですこと。

SHの街はどんな方でも歓迎です

次、クリーチャーがダメ。

序盤にヘザーが見た幻覚の中で一度だけライイング・フィギアが登場。この時点ではまだ今作のヤバさに気付けないので、カメオ出演として素直に受け止められる。

ヘザーの幻覚かどうか分からないけど、ところどころで顔を醜くしただけの人間型クリーチャーが現れる。単なるビックリ演出。いらない。

街につくとマネキン・モンスターが登場。今作オリジナルで中々面白い見た目をしている。悪くない。ただどちらかというとRPGに出てきそうな見た目だ。

マネキン・モンスター

今作でもレッド・ピラミッドシングが登場。ああーん三角様はこんなところにまで出張しなくっても。今作でやることは「精神病院で囚人の腕を切り落とす」「メリーゴーランドを回す」「ミショナリーと戦う」

精神病院のシーンは顔見せとして悪くないけど、鉄格子から腕を伸ばし続ける囚人がバカらしかった。そしてメリーゴーランドを回すシーンは、コメディかな? ミショナリーとの戦いも、やっぱりコメディかな?

というかメリーゴーランドを回すシーンはふざけてんのか!? 三角様をコメディアンにしたいのかよ!?

左側:レッド・ピラミッドシング

本当に意味が分からない。なんで三角様なんだ。別のクリーチャーでいいだろ。原作だとハンドルを回す専用クリーチャーがいるんだし、そいつに任せてもよかった。

これには理由がある。三角様を次のシーンへ登場させるための、繋ぎとしての顔だし。

それならもっと不気味に映してくれよお!

精神病院でバブルヘッド・ナースも登場。音に反応して刃物を振り回す演技が大仰すぎる。なんかの雑技団みたいにキビキビした反応。音に反応するって特性は分かりやすいけど、もっと怖めの演技できなかったんですかね?

ざっとこんな感じ。

今作を見ていると、やがてホラー演出の法則に気付く。音やカメラワークや編集の仕方はビックリ演出が多い。今作は恐らく、分かりやすいけどチープな、よく見かけるホラー映画の文法で作られたのだろう。

そしてそれは見事に失敗している。そもそもSHと名のつくものを観ようとしている人間が、普通のホラー映画として楽しもうとしている訳がない。前作はそこが配慮されていたのに、なぜ映画二作目で守ることができなかった!

前作の製作参加国がフランス・カナダだったけど今作はフラン・カナダ・アメリカ……アメリカ!? 犯人はお前か!



カメラワーク・演出など

ストーリーやホラーが駄目ときたら、技術的な部分でも粗が目立ってくる。

今作は見ているうちにカメラワークに違和感を感じてくる。なんだろうこの違和感は……ヘザーを画面の中心に据えたシーンが妙に多い。ヘザーを中心にするだけならまだしも、舐めまわすようにカメラを動かすシーンもあって酔いそう。

なぜこんなにヘザーに注目する? そんなに17才の女の子が好きか? 答えは今作の正式名称にあり"Silent Hill: Revelation 3D"そう3Dだ、だからヘザー中心だったのか! ヘザーと背景との距離感などを3Dで派手に見せたかったからだ!

次、SHの霧の表現。これは一発で違和感に気付かされる。ヘザーの歩行シーンは霧が合成であると丸分かり。おかげでヘザーだけが画面に浮いて見える。

おいおい、前作じゃ霧の表現になんの違和感もなかったじゃんか! 前作は2006年の映画、今作は2012年の映画だろ? そりゃ前作に比べると製作費が2分の1以下になっているけどさ、合成技術は進化しているはずだろ?

ともかく今作では霧の表現がヘタクソになっている。もしかしたら3Dで観れば違和感なく魅力ある画面になるのだろうか。見返さないといけないのか……?

次、SHの街が裏世界へ変貌するシーン。前作よりも豪華絢爛なCG。見ごたえはあるけどぜんぜん怖くない。……実はこれってコメディ映画なのかな? こっちがホラー映画だと勘違いしていただけなのかな?



悪アレッサ

前作をグチャグチャにした癖に今作でも飽きずに出てきやがって! 火あぶりだ! 火あぶりにかけてやる! 魔女め! 悪魔の子め!

今作の悪アレッサはまずヘザーが見る幻覚の中に登場。『呪怨』の佐伯俊雄みたいな姿にイメチェン。しょっぱなから笑らかしてくるねえ! 幻覚の中ではマグニートーも真っ青な力で街を破壊していく。

あーとっても怖いですねー

終盤ではヘザーの姿を真似て「みんな憎いから殺してやる!」といってヘザーに抱きつく。そうすれば殺せるらしい。けどヘザーが心を強くもって抱きつき返せば、逆に悪アレッサを取り込んでみせる。ココロハツヨイ。

やっぱり今作でも喋りまくって画面に映るたび雰囲気をぶち壊す……特にヘザーとの戦闘シーンよ。抱きつき合うだけなのに、なんでこんな劇的な演出にするんだ!?

しかもこの戦闘シーンは例のメリーゴーランドの上。そのことも含めて悪アレッサ関連のシーンは下らない。ツッコミどころが多すぎる。こいつ疫病神なんじゃねえの?



結論
SH映画としては褒めどころが一切ない。全ての点で前作のほうが勝っている。のみならずホラー映画としては怖くない。スプラッタ映画としては残虐シーンが少ない。粗製ホラー映画としては100点をつけるべきか。

今作を楽しめるかもしれないのは誰か? 私が思うに「SHシリーズを知らず前作映画も知らず、ホラー・スプラッタ映画がそこそこ好きな人」なら楽しめるかも。

万が一「SHファンだけど今作を楽しみたい!」って人は今作をコメディ映画として観るべきだろう。SH映画として観ると心臓発作を起こしかねない。

どうしてこんな映画になった……



さて、文句ばっかりじゃ気分が悪い。

頑張って今作の良いところを探してみよう。

ヘザー役アデレイド・クレメンス(Adelaide Clemens)

ヘザー役のしまりのない顔つきがかわいい。

これでサイレントヒル祭りは終わり。みなさんは好きなSHのゲーム・映画・コミックを見て怯えたり笑ったりしましょう。ではさようなら。

[Part1 ゲーム版SH]
http://kansomolashi.blogspot.jp/2014/07/part1.html#more

[Part2 映画版SH]
http://kansomolashi.blogspot.jp/2014/07/part2.html

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