2015/05/17

紺珠伝は完全無欠なのか?


東方Project、2015年の新作『東方紺珠伝』(とうほうかんじゅでん)

5月の例大祭12で体験版が頒布されました。そこには従来の東方になかった特別なゲームモード〈完全無欠モード〉がありました。このモードを一通り触って、いちゲーマーとして感じたことを書いていきます。

※システム面でのネタバレがあります※



今記事の流れはこんな感じ。
ゲームの知識があることを前提に話します。

1.そもそも完全無欠モードって?

2.完全無欠モードの良いところ

3.完全無欠モードの微妙なところ

4.まとめ

1.そもそも完全無欠モードって?

完全無欠モード”Pointdevice Mode”(以後はPDモードと呼ぶ)は、東方紺珠伝に搭載された独自のゲームモードです。

説明では「ノーミスクリアが出来るまで、チャプターを繰り返します」とあります。それって具体的にはどういうこと?というと以下の通り。

各ステージが細かくチャプターわけされている

チャプター到達ごとにオートセーブされる

残機がなく一度ミスしたら直前のチャプターでやり直し

例えるならグラディウスやR-TYPEなどクラシックSTGのような戻り復活式ゲーム。あるいはダークソウルのような篝火(チェックポイント)ありのオートセーブ式ゲームってところですね。

〈グラディウスやR-TYPE〉
古株の横スクロールSTGたち。残機制、ミスすると直前まで戻される。この仕様はクラシックSTGで多く見られる。
〈ダークソウル〉
2011年発売のアクションRPG。オートセーブ式、ミスすると直前の篝火(チェックポイント)まで戻される。

さて、東方のようなSTGではPDモードは非常に珍しい。STGは基本的に〈残機があり〉〈セーブ機能がない〉作りです。ないものを加えれば当然、今までと違った手触りになります。では実際にどうなったのでしょうか?

2.完全無欠モードの良いところ

残機制ゲームには大きな特徴があります。〈プレイヤーの意思に関係なく残機がなくなればゲームが終了する〉なのでプレイヤーは残機を減らさぬ努力をしなければいけない。それが面白さであり、また苦痛でもあります。

PDモードに残機はありません。なので終わりがなくプレイヤーに続ける意思がある限りゲームオーバーを迎えることはありません。

左:残機制STG 右:完全無欠モード

PDモードをやってみると、この感覚は弾幕STGにマッチしていると感じました。

まずSTGでミスをする場面を考えてみましょう。STGは敵の攻撃を覚えて乗り越えることが前提です。なのでときには覚え方が曖昧なときも。細かい部分ではランダム要素もあり、それへの対応も求められます。

「ああっ!さっきの弾幕は避け方を知っていたのに!」

「もうっ!この場面、前は避けられたのに!」

みなさん東方をプレイしたことがあるなら、こんな経験を何度となく味わったのではないでしょうか?つまり〈知っていたのにミスした〉〈やれそうでやれなかった〉という場面ですね。この悔しさは筆舌に尽くしがたい。

PDモードではこの悔しさを解消してくれます。ミスっても何度もやり直せる。悔しかった場面を納得いくまで繰り返せる。これが楽しい。

とある場面で詰まって納得いくまで繰り返します。すると別の場面も、同じ感覚で繰り返す。この勢いだけで繰り返してしまう感覚……ダークソウルをプレイした人ならよく分かるかと思います。中毒的で、惰性的で、やめられない。PDモードではそんな感覚を味わえる。

そして単純なことですが、さほどゲームが上手でないプレイヤーでも気力さえあればゲームを続けられるのも大きい。

PDモードの良いところはこんな感じ。

3.完全無欠モードの微妙なところ

PDモードの微妙なところは、2点あります。

まずひとつ。弾幕STGの面白さには爽快感があります。一時停止もなく数多の弾幕をかいくぐって各ステージを突っ走っていく快感は、弾幕STGならではといってよいでしょう。

ところがPDモードは残機がなくミスすれば直前チャプターまで戻される。つまりミスをするたびに一時停止を余儀なくされるわけですね。弾幕STGがもつ独自の爽快感が失われている。

もうひとつ。ボムの役割が薄い。私はこれがいちばん気になりました。

〈ボム〉
STGにおけるアイテムの一種。回数制、1発つかうと画面全体を攻撃し、敵を倒しつつ弾を消す。STGによってはその役割・性能が変わってくることも。

まず弾幕STGにおけるボムの役割を考えてみると、主に2つが考えられます。
・弾幕が避けられなかったときの緊急回避手段
・苦手とわかっている場面を突破するための決めボム

さて、PDモードはすでに話した通り、避けられかったチャプターを何度も繰り返せます。ボムを使わなくていい。むしろ使わないほうがいい。オートセーブという性質上、無駄遣いをすると取り返しがつかなくなるからです。

こうなるとボムには決めボムの役割しか残りません。どうしても避けられない苦手な場面でのみ使っていくのがメインになります。もはや苦手な場面をとばす回数制スキップ機能に過ぎません。それって意味があるのか?

「じゃあPDモードのボムには、どんな役割が与えられるべきなの?」

その答えは鈴仙にあります。鈴仙は紺珠伝の自機のひとりでボムが特殊な性能をしています。他キャラのボムが〈1発つかえば場面をリセットする〉なのに対して鈴仙のボムは〈1発つかえば3回までの被弾を耐える〉

分かりやすくいえば、バリア、シールド、アーマー……そんなところ。重要なのは〈1発つかえば○回まで〉という部分。その場限りの力ではない。

苦手な場面で使って、幸運にもその場面をうまく乗り切れたとしたらその後も効果が続く。無駄遣いのように使ってしまったとしても、効果が続くので無駄にならない。これなら決めボム以外の役割が生まれています。

左:普通のボム 右:鈴仙ボム

鈴仙のボムはPDモードと相性バッチリだと感じました。神主は、PDモードのために鈴仙をこの性能にしたのではないでしょうか。惜しむらくは他キャラのボムが従来通りでPDモードにそぐわないところですね。

どうせなら他キャラのボムも特殊な性能にすればよかったのに。極端な話、完全無欠モードに関しては前作『弾幕アマノジャク』のアイテムみたいにすればよかったと、そんな印象を受けました。

4.まとめ

完全無欠モードは弾幕STGのみならず、STGの新しい発展を感じさせるよいゲームモードです。クラシカルで閉塞的でさえあるSTGに、オートセーブという現世代ゲームの息吹が吹き込まれたら、ちょうどこんな風になるわけですね。

もちろん良いことばかりではありません。上に書いたような欠点もある。けど、やはり今のところはこの小さな一歩に敬意を表したいところ。

完全無欠モードに沿った作りの東方がみたいですね。完全無欠モードに習った別のSTGも見たいですね。それらがいつか目の前にくることを、期待します。

ではさようなら。

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